国立大学法人 钱柜国际777

本学への寄付

NMNの単回投与で即効性の代謝改善効果を実証-钱柜国际777が世界初の発見-
従来の複数回投与とは異なり1回の投与でもインスリン感受性向上と脂質代謝改善の効果が明らかに

 

 钱柜国际777大学院医学系研究科病態制御内科学講座(第三内科)の研究グループ(廣重俊典診療助教、梶邑泰子診療助教、田口昭彦講師、太田康晴教授?責任著者)は、NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)の単回投与によって、脂肪組織と肝臓からの脂質の放出が抑制され、その結果全身のインスリン感受性が改善することを明らかにしました。本研究成果は、加齢や肥満に伴う代謝疾患に対する新たな治療アプローチの可能性を示すものです。
 NAD+(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)は、エネルギー代謝において重要な補酵素であり、肥満や糖尿病などの代謝疾患では肝臓や筋肉でのNAD+レベルが低下することが知られています。またNAD+レベルは年齢とともに減少するため、健康および加齢性疾患にも影響を及ぼします。NAD+の前駆体であるNMNについては、身体の細胞を若返らせる作用があるとして注目されている「サーチュイン遺伝子(Sirt1~7)」を活性化させる働きがあり、抗老化?長寿効果が期待されており多くの研究が進んでいます。そのなかでNMNを複数回投与あるいは長期投与によって様々な病態を改善することが報告されていますが、単回投与の急性効果についてはこれまで詳細に解明されていませんでした。

 本研究では、健康な若年マウスへのNMN単回投与でも代謝改善効果が得られることを世界で初めて示しました。本研究で認められた脂質代謝を介したインスリン感受性の改善効果とそのメカニズムの解析は、糖尿病や肥満などの代謝疾患治療におけるNMNの実用化と新たな治療開発につながるものと期待しています。
 本研究成果は、2025年6月3日付でオンラインで先行公開されました。2025年9月に「Endocrine Journal」誌に掲載予定です。「Endocrine Journal」誌は内分泌代謝学分野の中で最も歴史のある英文ジャーナルの一つです。

研究成果

 本研究では、健康な若年マウスにNMNを単回投与し、肝臓、骨格筋、脂肪組織を用いて代謝変化を解析しました。その結果、以下のことが明らかになりました。

  1. ?NAD+代謝の活性化:NMN投与後、肝臓や脂肪組織でSirt1やNampt遺伝子の発現が増加し、細胞内NAD+レベルの上昇が示唆されました。
  2. ?インスリン感受性の向上:NMN投与によって、骨格筋でのブドウ糖の取り込みが亢進しました。インスリン分泌能には影響なく、インスリン感受性が高まっていると考えられます。
  3. ?脂質代謝の改善:NMN投与後、血中のNEFA(遊離脂肪酸)濃度が低下し、RQ(呼吸商)が減少しました。これは、エネルギー源として脂質の利用が促進されたことを示しています。
  4. ?脂肪組織?肝臓からの脂質放出抑制:NMN投与が脂肪組織からのNEFA放出と肝臓からのLDL/VLDL(低密度リポタンパク質/超低密度リポタンパク質)の放出を抑制することも明らかになりました。NEFAの低下がインスリン感受性を高め、筋肉へのブドウ糖の取り込みを亢進させるメカニズムの1つである可能性が考えられます。

 上図はNMNの代謝経路とその効果についてです。NMNが体内に取り込まれると、NAD+に変換されます。NAD+はSirt1という酵素を活性化しそれぞれの臓器へ作用します。骨格筋ではNMN投与前にくらべて糖の取り込みが増加し、インスリン感受性が高まります。またNMN投与によって、脂肪組織からの遊離脂肪酸の放出が抑制され、肝臓からのLDL/VLDLの放出も抑制されます。

 グラフはインスリン負荷試験の結果です。対照群、NMN投与群それぞれにインスリンを投与し、時間毎に血糖値を測定しインスリン抵抗性を調べる試験です。インスリン投与直前の血糖値を100%として、変化率を示しています。結果は、インスリン投与後60分および90分時点で、NMN投与群は対照群より血糖値が有意に低下していることがわかり